プレイ時間 2時間
あらすじ
憧れの同級生「冬木茉優子」は、自分のために作り出されたケミカル(人造生命)だった……。
そんな事実を突然知らされた主人公「岡崎智樹」と茉優子との奇妙な同棲生活が始まる。
戸惑い、憎み、そして愛情…様々な想いが交錯する日々の中で、二人は自分達の「ほんとうにたいせつなもの」を必死に捜し求める……。—僕と冬木はこの世界から消えつつあった……
まるで朝の陽射しの中に溶けていく儚い夢のように—
感想(ネタバレあり)
ヒロインが人工的に作られた存在というのはSF作品には多く耳にはすると思うのですが、この作品はそれに加えて、命の尊さ、誰かを失っていくことで気づいていくものにフォーカスしているなと感じました。
「死んじゃうとか…物になるって…きっと凄い事が起きてしまうんだと思ってた。事故や病気みたいに仕方ないなって思うような大きな何かが」
「でも本当は…ただ何もかもボンヤリと薄まっていくだけなの…あっけないよ…こんなに簡単に私は消えてしまうの…」
「私…怖い。もしかしたら、もう私は私じゃ無くなっているんじゃないかって……」「…もしかしたら、冬木茉優子はもうとっくの昔に死んでしまっていて、今の私は彼女のふりをした抜け殻なんじゃないかって…」
「ねえ、智樹君。もう私、冬木茉優子じゃなくなってるのかな? もう物になっちゃったのかな……?」
自分がケミカルなのか、人なのかわからなくなっていく冬木、この心の揺らぎが表れているところは胸が痛くなりましたね。
「人は一人ではあまりに寂しすぎるから……誰かに自分の全てを曝け出して、交じり合いたいと願うのかもしれない」
僕達はその後も、何度も何度も、時間を忘れて愛し合い続けた…
互いの命がまだ生きている事を確認するように……
互いの命がまだそこにある事を確認し合うように……
二人は、人とケミカルの境界を越え体を重ね合わせます。
それは切なさを超えた一つに真理。
愛情とか友情なんて、本当は自分勝手なものなんだ。
ただ自分が好きな相手を失うのが嫌だというだけの本当に自分勝手な我侭にしかすぎない…
…もし、この世界にだけしかいなかったら、僕にどんな価値があるというのだろう?
僕は、自分自身を価値の無い存在だと思っていた。誰からも顧みられない…必要とされない存在だと思っていた。
家族なんてただの同居人だと思っていた。
でも違ったんだ……いや、ずっとそれに僕が気付いていなかっただけなんだ…
ありがとう。父さん…野和………
冬木をうしなってから岡崎は自分が今まで見過ごしていた、
『たいせつなもの』に気づきます。
僕も岡崎のような病弱な幼少時代を経ているので、
彼のその心情にはすごい共感を覚えました。
走馬灯のなか、彼は冬木の姿を見つけます。
陽の光が次第に教室を明るく照らし始め
窓の外の朝霞が薄れてゆく……夢の時間は終ろうとしている。
朝になれば、僕は目覚めてしまう……
目覚めてしまえば、僕は知ってしまうのだ……君がもう僕の傍らにいない事を……
君と再び会えないことを……声にならない声で、僕は泣きながら叫び続けた。
せめて、せめて、夢の中でくらい……あの日、僕が君に言えなかった言葉を……
君と過ごした日々に。とうとう最後まで言えなかった言葉を……伝えたいんだ。
……僕は……